人間がついネガティブな気持ちに引っ張られてしまう理由

psychology 2019/11/11
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仕事でヘマをしたり、恋人や友人と喧嘩したりして、落ち込みやイライラがいつまでも残りつづけた経験はありませんか?

しかもややこしいことに、奴らはまるで狼の群れのように集団で攻めてきます。「羞恥心が混ざった怒り」「悲しみが混ざった恐れ」などといった具合に…。

ネガティブな感情が人に我を忘れた状態にさせる背景には、生物学的要因が存在します。無意識の奥深くに、私たちの生存を保証すると同時に、感情の調整に複雑な影響を与える心の働きが隠れているのです。この働きは、normative unconscious process(規範的無意識の過程)と呼ばれ、誰にでも存在するものです。

この過程は、「情動優位」や「皮肉過程」などのプロセスから構成されています。これらを知ることで、自分の感情をより効果的に管理することができるようになります。

情動優位

情動優位とは、「人間は具体的な情報の処理よりも感情の処理を著しく優先させる」という理論的枠組みのことです。言い換えれば、感情に強く訴える刺激は、情報処理の階層の中で主要な位置を占めています。私たちは、物事を認識してカテゴリーに分類することよりも、それが「快か不快か」、つまり「近づいてよいものか、避けるべきものか」を先に素早く判断するように進化してきました。

心理物理学的手法の1つに、2つの目でそれぞれ異なる視覚図形を見た場合、どちらか一方の図形が知覚され、時間が過ぎるとともに知覚が切り替わる両眼視野闘争という現象を利用したものがあります。この手法を用いたある実験で、次のことが明らかになりました。

  1. 感情的な内容は、非感情的な内容より優先される
  2. ネガティブな感情の場面は、ニュートラルな感情の場面より優先される
  3. ネガティブな表情は、ニュートラルな表情より反応を引き出しやすい

このことからも、情動優位の働きがどれほど力を持ったものであるかが伺えます。

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上の実験よりさらに場面を複雑にし、人々がそれに対してどのように注意を向けるかを調べると、私たちが「一つの場面が含む具体的な情報」よりも、「その場面の感情的側面」にいかにスピーディーに焦点を当てる傾向を持つかが分かります。

加えて、注意の配置は感情的刺激の強さによって異なる現れ方をします。ネガティブな刺激であればあるほど、私たちはそれらに注目しようとするのです。映画などの暴力的なシーンから目を背けたいのに、なぜか目を離せなくなってしまうのはこのためです。

情動優位は生存の観点からも理にかなっています。たとえば目の前にマンモスが現れた時、「これは哺乳綱長鼻目ゾウ科マンモス属に属する哺乳動物だな」などと分類している暇があるくらいなら、まずはとにかく逃げることが重要だからです。

その一方で、優先順位は、私たちがネガティブな感情を手放しにくい原因の1つでもあります。実際、生物学上は、感情に善悪は存在しません。どんな感情であっても、私たちが特定の場面においてどう反応すべきかについての手掛かりとして役に立つものです。

そうであるならば、場面からマンモスが去りさえすれば、ネガティブな感情はさっさと追い払い、すぐに平常心に戻れそうなものです。ところが、過去の不幸な経験やトラウマの蓄積により、神経システムが警戒態勢をなかなか解除せず、すぐには通常の状態に戻れないという事態が生じるのです。

皮肉過程

次に、皮肉過程と呼ばれるプロセスを見てみましょう。皮肉過程は私たちの日々の暮らしのあちこちに潜むものです。

「甘いものを控える」「タバコをやめる」「ネガティブなことを考えない」といった目標は、しばしば挫折に終わりがち。これこそが、何かを考えないように努力すればするほど、かえってそのことが頭から離れなくなるという現象、つまり皮肉過程です。

人間の脳は、想像以上の猛スピードで大量の感情を同時に処理しています。こうした処理の中には、車の運転や偏見を持つことなどのように、繰り返し行われることで自動化されるものもあります。自動処理はあまりも目まぐるしい速度で行われるため、私たちはその存在にさえ気づきません。皮肉過程もこうした自動処理の一種です。

仮に、子どもがぐずった時につい大声で叱ってしまう習慣をやめたいと考えたとします。そのためには、「大声で叱っちゃダメだ」と思うのは危険です。

皮肉なことに、この「○○してはいけない」という呪文が、実は逆効果なのです。「○○」ばかりが独り歩きして目立ち、それが子どもを大声で叱ることであれ、食べてはいけないケーキであれ、本来避けようとしていた○○のことをむしろ考えたり、それを行ったりする方へとあなたを仕向けてしまうのです。

自分が自動的に取っている行動を観察し、「深呼吸をする」「落ち着いた声で話す」「親としてけじめある言葉遣いをする」といった行動を取ることで、そうした自動処理を覆す必要があります。

こうして避けたい感情や行動を観察することで、反対にそれらに囚われてしまうという皮肉が生まれます。悪い習慣を断ち切るのに相当の時間と努力が必要なのも納得ですね。

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このように、私たちがついネガティブな気持ちに陥いる背景には、1つ目に人間がネガティブな感情を優先させる生物学的特性を持っていること、2つ目に心の自動処理によって避けたい感情に反対に引き込まれてしまうことがあります。

前者は人間が持つ動物としての単純な側面を表していますが、後者は人間特有の複雑な心の働きを映し出しているようでもありますね。今度ネガティブな気持ちになった時は、どちらのプロセスがそうさせているのか観察してみると、新たな発見がありそうです。

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reference: psychologytoday / written by まりえってぃ

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