大切な人をコロナから守るために理解したい「人はどうやって正しいことを行うと決めるのか」

psychology 2020/05/20
Credit: depositphotos

現在のコロナ禍において、外出自粛とソーシャルディスタンスを保つように要請が出されています。

そのため友人や家族と会うことが難しくなったほか、これまで楽しんできた外食やエンターテイメントとも距離を置くことに…。

外出自粛とソーシャルディスタンスの2つは、ウィルスの感染拡大を抑制するのに最も効果的かつ必要不可欠な方法です。一人ひとりが徹底して守ることで、終息の時期も早まる可能性が十分にあります。

しかし、そんな中でも専門家の意見を重く受け止めずに複数人で集まったり、仕事や重要な用事以外の理由で外出を続ける人がいます。

例えば、2020年3月25日に東京都から外出自粛要請が出されて以降、実際に出歩く人は減りましたが、普段と変わらずに出かけている人は15%いるとのことです。

「自分や大切な人をコロナウィルスから守るために、外出自粛やソーシャルディスタンスを徹底しよう」といった正しい行動をとるかどうかを決めるとき、人はいくつかの認知バイアスを持つ傾向にあります。

今回は、「人はどうやって正しいことを行うと決めるのか」を、新型コロナウィルスと心理学の観点からご紹介します。

The moral hindsight effect(見込みに基づいた後知恵効果)

自分がした行動によって良い成果が生まれるとわかると、人はそれをすべきだと判断します。これを「見込みに基づいた後知恵効果」と言います。

ある実験では、参加者に「例えば、子どもを助けるために道路に飛び込んでいくといった良い行いをすべきか、そうでないか」という質問をしました。

そして、子どもの命が助かるといったポジティブな結果が生じるとわかった場合と、どういう結果になるかわからない場合を比較しました。

結果、ポジティブな結果が生まれるとわかった方が、人は良い行動をとるべきだと判断することがわかったのです。

このコロナ禍の中で、外出自粛やソーシャルディスタンスをきちんと保つといった良い行いが、いかにポジティブな結果を生み出すかを知ることができれば、人はより率先して感染拡大の防止策に取り組むことができるでしょう。

The moral fatigue effect(見込みに基づいた疲労効果)

人は疲れているとき、そうでないときと異なる推測をしたり、決断を下す傾向にあります。

ある研究では、参加者に対して、線路に落ちた人を助けに行った人の話を掲載した新聞を読むようにお願いしました。そして、認識的に疲労を感じるタスクをこなした人と疲れていない人とで、話をどのように受け止めたか、違いを比較しました。

その結果、疲れている人は疲れていない人に比べて、「人命救助といった自己犠牲の必要性を感じない」と考える傾向にあることがわかったのです。

休校やリモートワークへのシフトなど、これまでの日常と大きく異る生活を強いられ、多くの人の心身に疲労が蓄積されているでしょう。研究の結果でもわかるように、人は疲れていると自己犠牲や良い行いをする必要性を感じなくなる傾向にあります。

ただ、疲労による影響は、未来の利益や良い成果を知ることで軽減されます。

外出自粛やソーシャルディスタンスの徹底など、一人ひとりの心がけで自分だけでなく大切な人も守ることができる、また感染拡大が抑えられると終息を早めることができるという良い成果に焦点を当てることが重要になります。

The counterfactual amplification effect(反事実拡大効果)

人は「どうしていたら違う結果になったのだろう」と考えることがあります。例えば、自動車事故があって通行人が重傷を負ったとします。「もし運転手がゆっくり走っていたら…」といったように、どうしていたら違う結果になったかと考えるのです。

実際に何が起きたかという事実だけでなく、「何ができたか」「何をすべきだったか」という想像が、自己犠牲を伴う行動に影響します。

先述の道路にいる子どもを助けにいくか否かの例を用いた研究では、参加者に「子どもを助けに道路に飛び込んだ」といった事実だけでなく、どうやったら違う結果になっていたかを想像してもらいました。

その結果、人は「もしそれをしなかったら、結果は悪いものになる」と想像したときに、道徳的に良い行いをすると決めることがわかりました。

コロナ禍の状況に当てはめると、外に出歩いたり、外出自粛をし続けない場合、具体的にどんな悪い未来が待っているかを想像することができれば、人は自分と大切な人のために道徳的に良い行動をとることができるということになります。

Moral elevation and emulation effects(道徳的な高揚と模倣効果)

人は、他人のために行った良い行動の話を聞くと、「自分も誰かのためになる行動を取りたい」と考えるようになります。具体的には、医療従事者がコロナ感染者のために治療にあたる、多くの人が医療従事者をサポート・支援する、といった話は非常に有効です。

ある研究では、人は他の誰かのために行った良い行動を見たり聞いたりすると、著しく道徳的な高揚を覚え、「自分も真似をして良いことをしたい」という気持ちを高めることがわかりました。

残念ながら、このポジティブな効果は、その行動によって良い結果が生まれたときに発揮されるもので、良い結果が生まれなかった場合は効果はありません。つまり、どんな話を見聞きするかが重要なのです。

Framing effects(フレーミング効果)

人はリスクを負うことを恐れる傾向にあるため、同じ事柄に対して「何を得られるか」と「何を失うか」とでは、違う決断を下します。

例えば、ある病気を抱えている患者に治療法について話す際、「この治療法によって、どれくらいの人が助かったか」を伝えたときと、「この治療法によって、どれくらいの人が命を落としたか」を伝えたときとでは、決断が変わるのです。

このパンデミックの中では、人は「コロナをもらってしまうかもしれない」と考えるよりも、「自分がウィルスを拡散させてしまうかもしれない」という心配の方が、率先して外出自粛やソーシャルディスタンスを徹底する気持ちを促します。

それは、自分の行動によって、家族など身近なコミュニティで最も弱い人(赤ちゃんやお年寄り)の命を守ることができると考えるためです。

ある研究でも、「何百万人もの人が亡くなる」ということよりも、「身近なコミュニティ内の弱い立場にある人を助けることができる」というアピールの方が、より効果的であることがわかりました。

一人ひとりの行動が大切な人を守る

今回は、「人はどうやって正しいことを行うと決めるのか」を、新型コロナウィルスと心理学の観点からご紹介しました。

コロナウィルスの感染拡大を食い止めるには、外出自粛とソーシャルディスタンスの徹底が必要不可欠です。もし、周りにそういった行動に消極的な人がいれば、今回ご紹介した心理的効果を参考に、伝え方を工夫してみてください。

共感しやすい、敏感な方へ。コロナで疲れた心を休める「デジタルデトックス」のすすめ

reference: Psychology Today, 東洋経済オンライン/ written by Cocology編集部
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